ベーシックインカムはこれからの日本に必要

ベーシックインカムはこれからの日本に必要

国からもらえるお小遣いベーシックインカム

ZOZOTOWNの前澤社長がベーシックインカムについて最近発言していたが、コロナによって経済が冷え込んでいる中でベーシックインカムのような政策は特別な意義を、そしてかつてない成長を生み出す可能性を秘めていると言える。まずベーシックインカムとは何かということを明確にしよう。私は国家に所属する国民全員が受け取れる国家からのお小遣いだと考えている。これは年金や生活保護と違い無条件で国民全員が平等に現金を給付されるということが特徴的だ。ベーシックインカムの導入は現在欧州を中心に議論されており日本でも今回のコロナの件で議論が加速されていくのではないかと期待される。ベーシックインカムという考えはつい最近生まれた発想ではなく、古くはトマス・モアから始まり20世紀後半にはアメリカの経済学者が右派左派問わず支持した政策で非常に特殊なものであることは間違いない。

ベーシックインカムのメリットとして最も挙げられるのは貧困対策だ。ベーシックインカムは貰うにあたって一切条件がなく、これは条件によって給付対象になれず苦しむ人々を生み出さないということであり、多くの人に経済的な余裕を生み出し社会秩序の安定が図れる。その例として2009年、イギリスのロンドンで行われた実験がある。13人のホームレス男性を対象に自由に使える金として3000ポンドを与えるというものだ。実験結果は13人全員が社会復帰の目途を立てたという良好な結果に終わった。社会を生きていくためには必ず金が必要になる。その金を支給することで貧困にあえぐ人々は選択の自由を得てあらゆる可能性に手を伸ばすことができるようになるのだ。この実験をニクソン政権下のアメリカもチャレンジしようとした。このチャレンジは国民からの支持と下院の支持を得ることはできたが上院の支持を得られずベーシックインカムの夢は絶たれることとなった。

この時問題になったのは今でも語られるベーシックインカムが生み出す弊害についてだ。それは勤労意欲が低下するというもので、これは現在、生活保護を巡る問題の中にも見受けられる。受給した額を適切に使っているのか、勤労努力をせず社会保障に甘えているのではないかというものだ。確かにこれは可能性として考えられるが少なくても例に挙げたロンドンの実験ではこうはならなかったわけで、さらに言えばニクソン政権がベーシックインカム制度のパイロット・プログラムを行った時もそのような傾向はなかったという報告が出ている。このニクソン政権の失敗以降しばらくの間議論にならなかったベーシックインカムが欧州で話題になり始めたのがスイスでベーシックインカム導入の是非について国民投票を行った2016年のことだ。結果は否決に終わったがオランダやドイツ、イギリスなど様々な国が新しい社会保障の形としてベーシックインカムに期待をよせている。フィンランドでは実際にベーシックインカムの実験が行われた。これはフィンランドとしては芳しくない結果がでたかもしれないが私個人としては大変有意義な実験結果だったと思う。ベーシックインカムは幸福度の向上そして雇用の向上につながるという結果がでたのだ。これは素晴らしいことでベーシックインカムは税制問題さえ気にしなければ政策として実行できるものなのだ。コロナへの経済対策として現金一律10万円の支給が決まり着々と支給されている日本であるがこのベーシックインカム的な政策を通して日本全体でベーシックインカムについての議論が高まってくると私個人としては嬉しいことだ。

では日本でベーシックインカムを行うとどのような利点があるのかということを説明する。まず年金・生活保護がいらなくなり行政の負担が大幅に減る。現在、社会福祉に関する行政の仕事量を多大なものだ。しかし、度重なる行政改革によって公務員の数自体は減少傾向にある。行政は拡大傾向にあるにも関わらず公務員の数が減少傾向にあるのは異常なことだ。中でも生活保護はその特性上監視の目をきつくしなければならないというプレッシャーもある。一方で生活保護受給者も受給することで社会に負い目を感じてしまう人も存在し、行政側と受給者側の双方に苦労があった。しかし、これをベーシックインカムに変えることで双方の苦労は全て解消されることになる。ベーシックインカムは平等に全員に支給されるため行政は監視の必要がなく受給者側は受給することが当たり前になり特別なことではなくなるのだ。この条件が一切なく利用も制限されないフリーマネーを万人に与えることで多くの人々の幸福度の向上につながる。松尾匡氏は水島宏明氏の「母さんが死んだ―しあわせ幻想の時代に―」というルポ本を紹介し生活保護によって苦しむ人々がいることを紹介している。現在の条件付きの生活保護が生み出す悲劇をベーシックインカムはなくすことができる可能性があるのだ。さらに経済に好影響を与えることも予想される。安定した収入があることは個人の将来設計に役立ち、各人の叶えたい夢への展望にも繋がることは間違いない。さらに個人消費の増加も考えられ何十年もデフレ不況に悩まされている日本がデフレから脱却する可能性も十分にある。また、定期的に金が入ることで投資や起業などもしやすくなり多くのイノベーションが生まれ経済発展が起きる可能性もあるのだ。さらにブラック企業が淘汰されるという効果も期待できる。なぜなら常に安定して生活に必要な最低限度の現金を政府が保証してくれる以上、個人は選択の自由が常にあり会社をやめることで収入が経たれるという不安がなくなるからだ。企業はクリーンでないと従業員が雇用できず倒産せざるをえなくなる。このように市場競争の激化も生む。現在の資本主義に関する批判はこのベーシックインカムの導入によって多くが解消されるだろう。

経済に対して多大な好影響を与えることが予想されるベーシックインカムだが、当然弊害もある。常に懸念される勤労意欲の低下だ。これは少ないだろうが発生するだろう。しかし、それならそれでいいと私は考える。最低所得の決定は貧困と中間層の境界でありそこに甘んじる以上、もしもの時には働かざるを得ないので労働意欲を示さなければいけなくなるからだ。しかも働かずとも消費さえすれば経済は回ることになる。すなわち少々労働意欲のない人間が現れても問題はないのだ。しかしこれは楽観視しておくわけにもいかずソ連経済がいかにして破綻したかということに着目することで、勤労意欲の問題により正確な提言や対策を講じることができるだろう。次に問題視されるのはベーシックインカムを行うにあたっての予算の問題だ。ヨーロッパはこの予算の問題によってベーシックインカムを再考しなければならなくなった。しかし、日本は独自の通貨を持っているためヨーロッパのような問題には陥らない。となるはずなのだが財政赤字を楯に不可能を唱える学者がいることも紛れもない事実だ。ここでMMTの名前を出して問題を全てないことにもできるのだが、私は残念ながらMMT支持ではないのでそのようにはならない。まず財政赤字を考慮する均衡財政の観点から見るなら増税をして社会保障費の全面的な見直しをすることがいいだろう。年金や生活保護をベーシックインカムに統合しその上で社会保障費を見直せば財源は捻出できることが予想される。また、それでも足りず増税となった場合でもベーシックインカムを受給しているので取られた分の一部は返ってくることになり大きい経済打撃は生まないであろう。井上智洋氏は「給付額-増税額」がプラスで純利益がマイナスであれば純負担が発生するといい、累進課税制であれば富裕層は納税額が多くなり純負担が生まれ、貧困層は納税額が少ないため純利益が生まれる。その間の中間層はプラスマイナスゼロとなるので理論上は問題ないという。続いて日本の財政赤字を無視する場合だ。そもそもなぜ無視できるのかというと日本の債務のほとんどが自国建て通貨によるものだからである。すなわち通貨発行権を持っている日本銀行がその債務分の金を刷れば債務はなくなるのだ。そのため財政赤字を気にすることがなくなる。

しかし、この観点でベーシックインカムを語るにあたって唯一注意しなければならないのがハイパーインフレのリスクがあるということだ。ベーシックインカムのようなバラマキ政策と呼ばれるものは常に過度なインフレを起こす可能性があると危惧されるが日本においてはさして問題ではない。なぜならアベノミクスで金融緩和を行ったが欠片もインフレにならなかったからだ。むしろその兆しがあったのに増税によって潰されその後再び経済が低迷することになったという点でインフレが起こることはむしろ今の日本にとって好影響を与えることを意味してる。そういう点を考えても日本でベーシックインカムを行うことは多くの利点を生み、さらに社会を明るくし経済活動や新しいイノベーションを生み出しそれが雇用の創出につながるなどいいことだらけなのだ。今日の日本は連続する経済政策の失敗によって長い低迷を余儀なくされてきた。しかし、このベーシックインカム導入は日本社会に新たな光をさすに違いなく今の日本社会に必要な政策と言えるだろう。かつて金本位制度があったがこれは経済がデフレに傾くのを結果として推薦しているようなものだった。現在では金本位制度は改善されている。現在でもこの金本位制度のような神話に近い形で信仰されている均衡財政が日本を苦しめている。これはかつての金本位制度のように日本経済の重荷になっていることは間違いない。国民の幸せを阻害する均衡財政論の崩壊こそ日本経済復活の道であることは間違いないし、均衡財政論の無視と共にベーシックインカムを盛り込み実施することで日本経済が復活することが見込めるのではないかということが今日の日本を改善する一つの道だと考える。

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