混迷を極める香港

混迷を極める香港

2019年2月から逃亡犯条例改正案反対を訴えることを皮切りに始まった民主化デモが留まるところを知らない。9月には行政側が法案を撤回することを表明、10月には正式に撤回された。しかし、11月になり2019年の終わりが近づいてきているにも関わらず、連日デモ隊と警察の衝突が起きて両者に負傷者が出ているという報道は絶えない。なぜここまでいさかいは継続力を持ち、私たちの目からは恐ろしいと思えるほどに至ったのか紹介したい

香港の土地柄

まずは香港の土地柄を理解しなければならない。1839年~1842年のイギリスとのアヘン戦争に清は敗北し、香港はイギリスの植民地となり、中国本土とは陸地で繋がっていながら全く違う統治がなされていた。そのあと中国本土では欧米列強に対抗するため改革を行おうとする人々の間で数々の内乱が始まった(義和団事件、辛亥革命)内乱により多くの難民や、共産主義を良く思わない人々が生まれ、その受け皿として香港は機能していた。つまり香港には漢人でありながら中華人民共和国が嫌いな人が多く住んでいる。

1997年の中英共同声明の結果香港は中国に返還され、一国二制度の原理に基づく特別行政地区となった。簡単にいうと中国という国に属してはいるがある程度の自治権をもった特別な地域だ。中国政府も経済の規模が大きい香港の反発を警戒しての処置だろう。人々は自治権を行使する特別行政区政府が中国に寄っていないか、民主主義が脅かされないか常に目を光らせており、その兆候を察知するとデモという行動を起こす。2014年に起きた運動も民主主義の危機や中国中央政府の干渉を危惧して起こった。

香港の政治体制

民主主義の象徴である立法府を見てみよう。立法府の議席は70議席あり、35議席は市民が普通選挙で選ぶことができるが、半分の35議席は一部の人間で行われる非民主的な制限選挙で選ばれる。また香港政府のトップである行政長官の選出方法は1200人の選挙委員会が投票する。そして選挙委員会は中国政府の力が大きく及んでおり、選挙委員も親中派が多く選ばれほとんど中国政府の息がかかった人物が行政長官になってしまう。香港は完全な民主化にはほど遠いのが実情だ。

逃亡犯条例改正案とは

香港が犯罪人引き渡し協定を締結していない国、地域の要請に応じて容疑者引き渡しを可能にするのが逃亡犯条例改正案だ。香港は20か国と協定を結んでいるが中国、台湾の間には結んでいない。つまり法案が通れば、中国本土、台湾、香港の間で要請があった場合犯罪人の身柄を引き渡せるようになる。改正案が持ち上がったのは去年2月台湾で起きた殺人事件が原因だ。殺人事件の容疑者が香港に滞在していた時に当局が逮捕したが、逃亡犯条例の規定により台湾へ移送することができなかったのだ。例えば中国本土で大罪を犯したAがいる。そのAが香港に逃れ香港で犯罪を犯したとする。改正案が通ると中国政府がAの身柄引き渡しを要請できるが要請なので強制力はない。しかし今の香港政府は構造上親中派が多数を占め、要請にたやすく応じる可能性がある。このような香港の自治権を侵す可能性を市民は危惧しているのだ。

デモ隊が掲げる五大要求

逃亡犯条例改正案は正式に撤回された。しかしなぜデモは収まらないのか。それはデモ隊の掲げる五大要求の一つしか達成していないからだ。五大要求を紹介しよう

  1. 逃亡犯条例改正案の完全撤廃 これは10月に達成された
  2. 普通選挙の実現、完全な民主化 これがデモ隊の最終目標といえる
  3. 独立調査委員会の設置 警察の対応を過剰な暴力であるとし、第三者組織が調査を行うことを求めている
  4. 逮捕されたデモ参加者の逮捕取り下げ
  5. 政府が民主化デモを暴動と認定したことの取り下げ

この五大要求は通るのか。また2014年のように警察の弾圧や過激化によるデモ隊の分裂で縮小するのか目が離せない

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