インド太平洋の自由を守るための欧米と日本

インド太平洋の自由を守るための欧米と日本

・現実としての中国問題

 日本にとって中国という隣国は問題点が多く、迷惑を被ってきた節がある。コロナ起源も中国であり、度重なる領海侵犯もされて日本は主権国家として安全を脅かされているのが現状だ。経済において日本を追い抜き、世界第二位の経済大国となった中国は共産主義体制に部分的な資本主義を取り込んだ権威主義体制を構築し、人権や自由などと言った重要な概念を国民から奪い、国家運営を行ってきた。その動きは近年より一層増しており、香港やウイグルで起きている実情や南シナ海への進出は近隣諸国の安全保障上の問題となっている。さらに債務の罠を用いて他国の国土を租借し、自らの影響下におくなど、その経済力に裏打ちされた横暴は今後、抑制せざるを得なくなるだろう。

 ASEANや日本、台湾にとってこの脅威は深刻なものだったが欧米諸国がこの危険性に気づいたのはここ数年のことだ。アメリカのトランプ政権が中国との対立姿勢を強めたことで欧米諸国内における中国に対する認識に改善の兆しが見え始めた。2018年のペンス副大統領(当時)の対中演説の辛辣さはアメリカが中国を世界戦略において重要な点においたことを明確にしたのだ。こうしてNATO、EUが中国への危機感を抱き、それはEU加盟国の外交にも現れた。バイデン政権が誕生したことでアメリカ単独で中国と対立する時代から多国間連携によって対抗する時代へと変化が発生、欧州は自由と人権の保護のためインド太平洋への関心を高めている。欧州が共有する自由・人権・環境などの価値観の保護のため対中国をめぐる世界戦略は新たな持久戦の様相を呈しているのだ。

・2019年、フランスがインド太平洋地域における外交方針を発表

 EU諸国に変化が起きたといってもそれを対中抑止の最善の協力者と理解するのは間違いだ。なぜなら中国はEU経済を支える重要な貿易国の一つだからである。しかし、フランスは2019年頃から太平洋における軍事的行動をオーストラリアなどと連携して行っている。太平洋地域に海外領を持つフランスにとって太平洋地域の安全と安定は重要なことだ。しかし、法の秩序や航行の自由をフランスは求めている。これすなわちフランスはこの地域の安定に不安要素があるということだ。フランスは欧州の中では軍事大国であり、影響力は大きい。そのフランスがオーストラリアやASEAN諸国、インドなどと連携をとって東アジアに影響力を行使していることは地政学の観点から見ても興味深いものがある。

フランス外務省のインド太平洋に関する発表

https://www.diplomatie.gouv.fr/en/country-files/asia-and-oceania/the-indo-pacific-region-a-priority-for-france/#:~:text=In%20an%20international%20context%20marked,the%20heart%20of%20this%20strategy.

仏原子力潜水艦、南シナ海を巡回 中国の反発必至 (AFP BB News)

https://www.afpbb.com/articles/-/3330846

・2020年、ドイツ国防省が「インド太平洋ガイドラインを発表」

 フランスに送れること一年、ドイツ国防省もインド太平洋地域の方針を策定、ガイドラインを発表した。ここでドイツはフランス同様、法の支配・航行の自由・公正な取引などを重視しており、地域安定のためにフリゲート艦を一隻派遣するとの発表をしたのである。フランスよりもドイツの方が派遣する軍艦の規模が小さいが海外領を持たないドイツがインド太平洋地域の安定のために派遣を決断したというのは大きい意味があるだろう。両国共、同じような理由で軍艦を派遣しているが、その意味合いが双方においては多少違う。ドイツの方が国防上の大きい理由はないのに派遣というのは欧州における中国への認識に変化の兆しがあることを示しているだろう。

ドイツ国防大臣によるインド太平洋地域に向けたスピーチ(ドイツ国防省より)

https://www.bmvg.de/en/news/indo-pacific-region-for-a-rule-based-order-4912214

※ドイツ国防省サイト内から「インド太平洋ガイドライン」のpdfファイルをダウンロード可能。「Policy guidelines for theIndo-Pacific region」で検索。

・環境では話し合える

 フランスもドイツもアメリカも環境保護の観点では中国との交渉は可能であると必ず注釈をつけている。これは環境主義政党の国内での党勢が拡大していることも要因の一つだろう。仏独両国内における環境政党の党勢は間違いなく拡大している。これらは地方選挙の結果からも明らかだ。アメリカのバイデン政権も環境保護に視点を置いた政策の実施を公約しているだけでなく、気候変動サミットなど積極的に環境に配慮したアプローチを行っている。中国は一応温室効果ガスの排出を先進国よりも遅れること数十年後にゼロにするとの意気込みだが、これに変化が起きるかもしれない。まだ交渉次第で融和へと持っていけるのであればそれにこしたことはないというのが中国の考えだろう。今年の三月に全人代が控える中国では第十四次五か年計画が発表の予定だ。ここに気候変動についての計画が発表され世界との交渉に移っていくことが予想される。

・ 2021年2月、イギリスが太平洋にやってきた

 イギリスのTPP参加意欲というのはイギリスがEUから離脱したことで開始された新外交戦略の柱と呼んでもいいのではないだろうか。加盟に向けた交渉が随時開始され、早ければ数年以内に加盟が実現する。さらにはクアッドへの参加にも意欲を示しており、イギリスが対中包囲網の一角を担うことは明確になったと言ってもいい。香港における自由の侵害、そして民主活動家の不当な弾圧はイギリスにとって大きな出来事だった。アメリカのシンクタンクであるCSISが日本の「ファイブ・アイズ」加盟を提言したことが一時期話題になったが、イギリスのこの動きはより一層この提言に現実味を与えるだろう。しかし、実現するためには日本側の準備が必要となる。ゆえに期待は持ちつつも実現のための努力をしなければならない。

・トランプ政権からバイデン政権への手紙―ホワイトハウスの内部文書公開―

 トランプ政権は政権末期、引き継がれるバイデン政権への移行を前に一つの意思表示を行った。それはホワイトハウスの内部文書の公開だ。非常に珍しいものであり、現在ではこの文書を見ることはできない。トランプ大統領(当時)が政権末期に「インド太平洋地域」に関するホワイトハウスの内部文書を公開した背景には政権が変われど、アメリカの姿勢を変えないための一つの作戦であり手紙だった。実際バイデン政権は中国に対して非人道的だと批判を行っている。覇権国として覇権に挑戦してくる中国を軽んじず断固とした姿勢で中国との対決に望めとの意思を感じるこの行動はやはり重要なことだった。アメリカ国内で反中国世論が高まりを見せる中、きちんと残された共産主義遺伝子との対決を制すという意思がアメリカにそして自由主義国家に問われている。

・人権弾圧が続々と暴かれる中国

 中国は南京事件を使って度々日本を非難してきた。この嘘か本当かわからない事件を彼らはまるで現実の事案のようにふるまってきたが、その虚構も含め今日中国の非人道的な行いは世界に向けて次々と報道されている。ジェノサイドが起きているという報道もあるほどだ。彼らがウイグル自治区、チベット自治区に対して行った非人道的行為の数々、弾圧や不当な取り締まり、教育という名の洗脳など、もろもろが暴かれ、経済大国の裏側にあった数々の不幸が白日の下にさらされている。利己的で人権の価値も知らず、多民族の価値も尊重できず報道の自由も非難の自由も身体の自由も思想の自由もない国で一部の人間だけが幸せに暮らしている様が今、国際的な懸念を呼びその真実が今、欧米諸国を動かす原動力の一つとなっているのだ。

・日本は再びアジアの模範へ

 日本が明治維新を達成した時、東アジアの中で最も尊敬を集めた。いち早い西欧化を実施し各国の知恵や技術を提供し、今日においては援助金も拠出している。ASEAN諸国も成長期を迎える中、自由主義国家が尊重する価値観を破壊し、強権的な行いを経済力と軍事力で正当化する国家を果たして信用する国家としておけるのだろうか。日本が経済的に衰退している現状を改善し、再びアジアの経済大国へそして自由主義国の価値観を尊重する模範として日本が復活した時、真に中国に対抗できる地盤が整うと考える。だからこそ現在の日本には経済復興と外交努力、平和憲法下の防衛観からの転換が求められているのだ。

Polimos代表 オカソ

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