バイデン政権を取り巻く環境と政権の政策を人事から考える

バイデン政権を取り巻く環境と政権の政策を人事から考える

 1月20日就任式をもってアメリカにバイデン政権が誕生する。アメリカは民主党政権の誕生によってどうなるのか。Podcastで話した内容を踏まえ、さらにそこに新しい情報を足しながら、バイデン政権の方向性を紹介する。

(これより下の内容の一部はnoteにも書いた内容なので、そちらをすでに読んでくれた人は人事のところまで飛んでください。)

・ バイデンが当選するまでの民主党

 まず民主党はここ数年、左傾化が進んでいる。今の民主党は左翼系の議員と金融系(都市部)の議員の2つの派閥が存在していて、これらがどのようにバイデンの政策に影響を与えるかを見抜くには予備選挙の結果から見る必要がある。

 予備選で強かったのはバイデン・サンダース・ブティジェッジ・ウォーレン・クロブチャーの5人だ。実は予備選では当初、バイデンは不利だった。しかし、最初はつまずいていたバイデンも、20人近くもいた民主党大統領候補者の相次ぐ予備選からの撤退によって徐々に支持を固めていき、最終候補まで残った。バイデンと最後まで民主党大統領候補者の座を争ったのは社会民主主義者のサンダースだ。この段階でいかに民主党支持者の間で左傾化が進んでいるかがわかるようなものだろう。結果としてバイデンはサンダースとの政策合意などを経て民主党大統領候補者になった。

 この予備選の結果からわかるのは民主党の左翼陣営は勢いづいていて、その勢力をバイデンは無視できないということだ。さらに言えば、なぜバイデンが最初、不調だったのか。これは彼のイメージや主張が支持者を引き付けられてないことが要因であり、結局大統領選もトランプか反トランプかといった対立構造になっていたことも否めない。彼は人気があったわけではないのだ。

・バイデン政権を取り巻く環境

 アメリカは偶数年に複数の選挙が同時に行われる。今年は下院・上院・大統領選の3つだった。下院は任期が2年、上院は任期が6年だが、2年ごとに3分の1が改選、大統領は任期4年だ。

 今年の選挙結果だが、下院は議席を減らすも民主党が過半数獲得、上院は未だ結果が不明だが、もし拮抗状態で50:50(名ばかり共和党員が1.2名いる)の場合はバイデン政権が主導権を獲得。まだ決まってない上院の議席はジョージア州の2議席のみでここは共和党の牙城だ。そのため、ここを2議席とも共和党が落とすことにならなければ、共和党が上院での主導権を握ることになる。

 上院の過半数を共和党が獲得していると、バイデン政権は上院の顔色を見た人事を計画しなければならない。なぜなら大統領の人事を承認するかは上院次第だからだ。例えばの話だが、もしバイデン氏が国務長官を左翼にやらせようとしても上院で拒否されるとその人は政権に参加できない。すなわち上院で主導権を握っている政党の意向を無視した人事はできないのだ。そのためバイデン政権は共和党が上院過半数獲得の場合、左翼陣営の人間を政権に入れることはできないだろう。

 続いてバイデン氏本人の話だが、彼は2期8年やることはないと考えられる。これはバイデンの年齢から推測されることだ。

 続いてバイデン政権の政策を読み説くうえで重要なのは次の選挙だ。アメリカでは2年ごとに選挙があるため、安定した政治を行うためには中間選挙を意識した政策を実施しないといけない。そのためバイデン政権としては2022年の中間選挙を見据えた政策を実施しなければいけないだろう。実際、今回の下院選で共和党が議席を伸ばしているので、極端な左翼政策を打ち出すことはますます難しい状態となっている。ゆえに最初はバラマキをやる可能性が高い。さらに言えば、2022年の中間選挙で改選される上院の地域は有名なラストベルトであり、ここは工業地帯だ。環境政策について言及しているバイデンだが、環境重視で工業を規制すると次の中間選挙で痛い目を見ることになる。そのため最初の2年は国内に強く環境政策を行うことは難しい。そのためバイデン政権が本格的に左翼政策を行うとしたら、2022年の中間選挙後だろう。

 最初の2年は中間選挙を念頭に置きつつ、コロナ再拡大の防止策とそれに合わせた経済政策、さらに脱トランプを鮮明にするため大統領令を連発し、改革の意思表示をしていくことが予想される。

 バイデン政権はすでに内部にも外部にも問題を抱え板挟みであり、党内の不安定化とコロナ、そして上院の関係上、人事も調整が必要と悩ましいのが現状なのだ。この基盤が安定しない政権は公約を見ればわかるが、内政重視であり、あまり外交に目を向ける余裕があるとは思えない。次に触れる人事にもそれがあらわれているように感じる。

・人事を見る

1.国務長官

 まず外交を主として担当する国務長官だが、バイデン政権は国務長官にアントニー・ブリンケン氏を指名した。アメリカの今後の外交を不安視する人は少なくないと考える。これはバイデン政権によってトランプ政権時よりも中国に弱腰になるのではという理由によるものだろうが、私はトランプ政権よりも軟化はすれど、強めの姿勢でいくと推測している。

 こう言える最大の理由はアメリカが未だ覇権国家の意識があり、中国は明確に覇権に挑戦しようとしているからだ。いかに様々な疑惑が出たバイデンであれど、私利私欲のために国家の覇権を譲るような売国はしないと考えられる。しかし、トランプ政権のような身を切る貿易摩擦では民主党のポリシーと合わない。そのため多国間連携によって人道的観点から中国に圧力をかけると推測する。アメリカと中国はお互い経済を共有している状況であり、極端な政策は打てないのが現実だ。

 しかし、先ほども述べたがバイデン政権は積極的に外交をやる余裕がない。だからブリンケン氏が指名されたと考えられる。ブリンケン氏はバイデン氏の側近だ。さらに国務副長官の経験もあり、オバマ政権で活躍した1人だ。非常に実務的な人間だと評されている。ゆえに国防長官になると推測されているミシェル・フロノイ氏と共に多国間連携を通した対中政策を行うことだろう。これがトランプ政権よりも強硬かと言われればそうではないだろうが、中国抑止の政策をとるだろうということは言える。

 バイデン政権の外交は人道面からの圧力と述べたが、実はこれは対中抑止以外にも影響を与えることになるかもしれないことも理解しなければいけない。それはインドだ。インドにおける人権問題は定期的に世界を騒がせる。特に女性の人権問題は深刻だ。このような観点からインドにも是正を求める可能性があり、これは不安要素でもある。多様性を重視するバイデン政権にとって女性の人権もまた重要なことだ。トランプ政権のような対立姿勢ではなく、同盟国との協調姿勢の中で交渉していくというプロセスはイランの場合のような結果になるだろう。これは一時的な抑止にしかならないかもしれないが、やらないよりましだし、その間に日本が独自に国防力を高めれば国際政治における発言力も高まってくる。アメリカを悲嘆するだけでなく、自国の成長をもってこの欠陥を補わなければいけないことにも気づいてもらいたい。

2.財務長官

 財務長官に指名されたのはジャネット・イエレン氏だ。彼女は元FRB(連邦準備制度=中央銀行)の議長であり、何より女性だ。日本でもそうだが閣僚として女性が入閣するとそれは多様性の尊重らしく注目される。しかし、日本と違うのはイエレンが単なる女性ではないということだ。元FRB議長の名は伊達ではない。彼女は実績ある経済学者である。有名なケインズ主義者としても有名で民主党からは実務的かつ経済政策を方向は似ているということでかなり期待されている。しかし、彼女は社会主義者やMMT論者のように国家の借金は関係ないという主張はしていない。むしろ財政赤字の増大に関しては何度も警告を出している。そのため、左翼からの評価は段々と変わってくるのではないかと考えられるが現段階では高評価の意見が多い。コロナ不況の立て直しのための財政出動には受容的であるので、環境政策へのインフラ投資含め、バイデンの経済政策は問題なく進むと考えられる。しかし、左翼が希望する国民皆保険は実現しないだろう。

3.大統領側近

 側近としてロン・クレイン氏とジェイク・サリヴァン氏がいるが彼らは長年、バイデンと仕事をしてきており信用のできる人間を側においたということだ。両者とも実務経験は豊富であり、ロン・クレイン氏は大統領選挙の最中もバイデンと仕事をした功労者の1人だ。サリヴァン氏はクロブチャー氏やヒラリー・クリントン氏の下で仕事してきた経験のある若手だ。両者は民主党の主流派とバイデンを繋ぎ、左翼をコントロールするための足固めの一環なのかもしれない。

・恐ろしい環境政策

 バイデン政権は大統領特使としてジョン・ケリー元国務長官を指名。彼は環境対策の特使として政権入りするらしい。これは由々しいことでもある。最近、欧州の投資家が環境への配慮から三菱に火力発電所について文句を突き付けたらしいが欧米の環境問題への意気込みは高まっている。これはアメリカのエネルギー産業にとっても日本のエネルギー政策にとっても重大な案件だ。環境問題専用の特使を配置するということは、バイデン政権はグリーン・ニューディールをやる気ということだ。これは左翼に配慮した結果かは未だ判断がつかないが、恐ろしいことであることは間違いない。国際政治に環境問題を持ち出して他国に押し付ける姿勢を取られると同盟国との関係が微妙になり、中国の成長を許すことになる。まさにバイデン政権は何をするかによって大きくアメリカの今後を左右することになってしまう不安定な政権なのだ。

・最後に

 バイデン政権の誕生は確かに個人的には残念だが、現実として受け入れるほかない。日本は日本の国益のためにアメリカ重視は変わらず、アメリカが変な方向にいかないようにできることをしつつ中国の台頭を積極的に防ぐために経済大国として多国間連携を行いつつ、国力を増大し、国防を充実させていく必要がある。菅政権の外交に不安なところがあるが、それでも世論という民主主義社会における最大の武器を通じて菅政権が日本の成長を引き起こす政権となるように行動していくしかない。

ちなみにnoteでも大体週に1回ペースでサイトの記事とは別に記事を書いてるのでそちらもよろしくです。

https://note.com/okasodayo047

Polimos管理人オカソ

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