ポストメルケル決着へ、悩ましい党首選

ポストメルケル決着へ、悩ましい党首選

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・欧州の女帝の引退

 長きにわたってドイツに君臨し、欧州での影響力を拡大し続けてきたメルケル首相がいよいよ今年の9月に行われる議会選に出馬しないことを持って引退する。これによってドイツは新たな旗頭の下、したたかな躍進の道を模索することになった。ドイツの戦後史を見ると長期政権か短命政権かとわりとはっきりしているように思われる。戦後のアデナウアーやコールに並ぶ長期政権を作り上げたメルケル氏の後任を誰が務めるのか。これを模索し続けた2.3年にいよいよ決着がつこうとしている。メルケル氏が引退を表明した後にメルケル氏も所属する与党CDUの党首選でカレンバウアー氏が党首に当選するも、求心力を発揮できず党首の辞任を発表、今回のCDUの党首選はメルケル路線を引き継ぐか、保守政治に回帰するのかという選択肢の中で行われようとしているのだ。

・メルケル路線とAfD

 メルケル氏が引退を発表するに至った要因として2017年の議会選挙での敗北が挙げられる。メルケル政権で行われてきた移民受け入れ政策に反発するなどの要因によって選挙で敗北、メルケル政権の中道路線に国民から「No」が突き付けられる形となった。このタイミングで躍進したのがAfDだ。AfDは移民流入政策に反対な有権者からの支持を受けて躍進したことが特徴的である。これによってCDUの中ではこれまでのメルケル中道政権を疑問視する声が党内から上がり、メルケル氏によって要職を退くこととなった有力議員たちの声が大きくなった。特に今回の党首選に立候補している候補者たちはラシェット氏を除けば、メルケル氏とひと悶着あった経緯がある。特にメルツ氏は保守系支持者からの支持が熱く、今回も善戦が予想されるわけだ。ドイツは政治のシステム上、議会で過半数を獲得することが難しく、どこかしらの政党との連立によった政権安定が通常だが、メルケル政権における社会民主党との大連立によるCDUの中道化を支持者の一部は評価しない方向が強まっている。ゆえにCDUの支持者はCDUの保守回帰を望んでおり、それは党首選における支持率調査にも現れている。

・メルケル以後のドイツ

 元々、人口減少対策として移民流入政策を行って労働人口確保に動いていたメルケル政権は移民による治安や社会環境の変化を国民に理解されず、欧州統合の母としての活躍も国内での支持率低迷を持ってかコロナ以前は息をひそめていたようにも思える。今回の党首選ではメルケル路線の引継ぎか保守回帰かが問われているようだ。ラシェット氏はカレンバウアー氏同様メルケル氏側近として知られている。一方のメルツ氏は前回カレンバウアー氏に僅差で敗北したが、今回より求心力を失いつつあるメルケル派に勝利することもあり得るのではないのだろうか。現在、Civeyの世論調査によるとメルツ氏とレトゲン氏の二人がその座を争っているように映る。メルケル時代反主流派として活動してきたメルツ氏か外交通としてロシア、中国の脅威について理解しているように思われるレトゲン氏かでCDUは党首選を迎えるかもしれない。一方で候補者以外の可能性を求める声もある。現在、メルケル政権で保健相を務めるシュパーン氏や姉妹政党であるCSUの党首を支持する声もあるのがおもしろいところだ。特にシュパーン氏は党首選に立候補はしないが、議会選挙後の首班指名選挙への意欲を示していることもあり、今年のドイツは混迷を極めそうだ。

・脱メルケル(保守回帰)か中道路線継続か

 誰が党首になろうと9月には議会選挙が控えている。党首選の結果次第では議会選にも大きな影響が出てくるのだ。路線継続となれば社会民主党や現在、支持率を拡大している緑の党との連立による政権樹立と予想される。しかし、保守回帰となると、社会民主党との連立は当然、緑の党との連立も難しいだろう。そうなると選挙での大勝が求められるのだ。メルケル路線継続となると、中国とのある程度の連携はあり得る話である。しかし、保守回帰となると中国とも距離をとるのではないかとの意見もあるのだ。これは実際に見てみないとわからないが、割と親密だった中国との関係に安全保障の観点から課題を感じているのは事実である。フランスのマクロン大統領の指導力も疑問視される中で、欧州の主導者であるドイツの方向がどうなるのかは今年の国際社会においてとても重要だ。

党首選の結果について触れたpodcast

Polimos代表 オカソ

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